人生100年時代ブログ

2020.04.14

症状から病気を考える①

●動悸がする

動悸イコール心臓病ではありません

身体を動かしたわけでもないのに、心臓がどきどきする、心臓の鼓動を強く感じる、脈が早くなるなどといった、心臓の鼓動を病的と感じるのが動悸です。循環器内科受診のきっかけとしてもっとも一般的な症状のひとつですが、動悸がするからといってすぐに心不全や狭心症、心筋梗塞などといった心臓関係の病気と考えるのは早計です。不安やストレス、睡眠不足などといった日常生活の変化から起こることや、各種の癌や貧血、腎疾患、バセドウ氏病などといった病気で動悸を感じることもあるからです。 

動悸を感じた時に大事なことはそれがいつ、どんな状態の時に起きたか、また、それがどのくらい続いたか、頻度はどうか、動悸が起きた時にそれ以外に感じたことはないかなどをきちんと意識、記憶しておき、医師にそれを伝えることです。本人の病歴も大事ですが、もうひとつ大事なのは家族、親族に睡眠中や安静時に突然死した人がいないかどうか。というのは遺伝性不整脈の中には睡眠時や安静時に突然死に至るブルガダ症候群という心臓の病気もあるからです。

動悸と同時に胸が痛む場合は狭心症の疑いが

一方で動悸を感じた時に胸が痛い、圧迫される、息が切れるなどといった症状を伴っている場合には注意が必要です。ある疾患に付随して起きる副次的な症状を随伴症状と言いますが、胸が締まるように痛い場合には狭心症心筋梗塞、息が切れるような場合には心不全の可能性があります。

狭心症は冠動脈(心臓に血液を供給している血管)の一部に異常が起きたことで心筋に血液が流れにくくなり、心筋(心臓の筋肉)が酸素不足に陥って弱ってしまうもの。そのために締めつけるような胸の痛みを感じることが多いのです。

痛みを感じる場所としては前胸部、胸骨後部などが挙げられますが、必ずしも胸だけはなく、痛みが下顎、歯、首、左肩あるいは両肩、みぞおち(心窩部)などに出ることがあります。これを放散痛といいます。さらに呼吸が苦しい、めまい、冷や汗が出る、吐き気がする、嘔吐、意識消失などの随伴症状を伴うこともあり、こうした症状がある場合には重症であることが多く、注意が必要です。

こうした痛みは運動をした時や興奮した時などに起こりやすく、通常は圧迫されるような痛みが数分から10分ほど続きます。痛み自体はしばらく休めば収まってきますが、それで安心してはいけません。

この状態を放置しておくと冠動脈に血栓ができて、血流が途絶えることになり、それによって周囲の心筋が壊死してしまうのが心筋梗塞(通常、30分以上痛みが続きます)。動悸と胸痛がセットになっている場合には早めに医師に相談することが肝要です。

動悸、息切れには心不全の可能性も

心臓の働きはポンプに例えられる通り、全身に血液を循環させること。ところが、それが何らかの原因で心臓のポンプ機能が低下し、血液の循環がうまくいかなくなり、さまざまな症状が現れる状態を総称して心不全といいます。具体的な心不全の原因としては前述の心筋梗塞狭心症などといった虚血性心疾患、心筋症、心筋炎、心室頻拍などの不整脈、弁膜症その他様々な要因があります。

共通しているのは心臓=ポンプの調子が悪くなることで心臓から十分な血液を送り出せなくなること。その結果、身体に必要な酸素や栄養が行き渡らないため、それによって息切れをするようになるのです。

また、心不全になると脈が早くなります。心臓の働きが弱くなり、一度のたくさんの血液を送り出せなくなった分、回数を増やして辻褄を合わせようとするからですが、これも体にとっては良いことではありません。日本の多くの医学の教科書では1分間に100以上を頻脈としていますが、もっとも長生きできるのは60~70。多くの医者は80を超えてきても気にしませんが、注意したい点です。頻脈については自覚がない人、無症状の人も少なくありませんが、続くと疲れやすく、疲労感が続くなどと感じるようになってきます。

高血圧の人はさらに注意を

高血圧でかつ動悸、息切れなどを感じる場合にはさらに注意が必要です。日本食は塩分が多いためか、日本人の塩分摂取量は世界でも多め。平成29年国民健康・栄養調査結果はこの10年間で有意に減少しているとしていますが、それでも平均値は9.9グラム。男性10.8グラム、女性9.1グラムとなっており、「健康日本21(第二次)」の目標食塩摂取量8グラムに比べるとまだまだ多い状況です。

高血圧で動悸や息切れがあり、さらに脚に浮腫みがある場合にはかなりの割合で慢性の心不全が疑われます。先ほど、心臓=ポンプの働きが悪くなることで全身に十分な血液が流れないことで息切れが起きると説明しましたが、同時に全身の血液が心臓に戻りにくくもなります。その結果、血液のうっ滞(血流などが静脈内などに停滞した状態を言います)が起こり、水分が血管の外にしみ出してむくみとなるのです。

むくみは下肢に起こりやすい症状で、むこうずねの下あたりや足背を指で強く抑えた後、指の跡がくぼんで残るようであればむくんでいると考えられます。むくみがあるとその分、体重が増加することも。特に短期間で体重が急増するような場合には心臓の動きが悪くなっていることが考えられます。

また、夜間頻尿、夜間高血圧にも心臓の病気が潜んでいる可能性があります。夜間頻尿は夜間、排尿のために起きなければならない症状で、加齢とともに頻度が上がります。原因は高血圧、腎機能障害、睡眠時無呼吸症候群(睡眠時に呼吸が一時的に止まる病気)、過活動膀胱、前立腺肥大症などから水の飲み過ぎまで様々ですが、そのうちのひとつに心不全の可能性があります。昼間、心臓が疲れてしまって排尿が十分にできず、そのしわ寄せが心臓の休んでいる夜間に来るというものです。

夜間高血圧も同様です。一般に夜間の血圧は昼間に比べ、1~2割下がるもの。それが高いまま、下がらないあるいはむしろ上昇するのが夜間高血圧ですが、この原因のひとつに心不全があるのです。それ以外にも腎臓病、睡眠時無呼吸症候群、糖尿病などの懸念もあります。いずれの場合も身体には大きな負担となり、リスクとなります。動悸をきっかけに自分の身体の状況を冷静に観察、早い時期の受診を考えたいものです。