人生100年時代ブログ

2020.05.26

症状から病気を考える③~息切れ~

●息切れがする

息切れに重篤な病気が潜んでいることがあります

走る、運動をする、坂や階段を上るなど身体に負担をかけるようなことをしていないのにも関わらず、呼吸が苦しいと感じることがあります。これが息切れという状態です。

呼吸の回数が増えたり、深呼吸を繰り返したり、人によっては寝ている時に息苦しさを感じて起きてしまうことなどもあります。ひどい場合はものの100mほど歩くだけでも休まなくてはいけない、服を着るだけでも息切れがするようになることも。息切れを意識するようになったら、そんな状態になる前に診察を受けることをお勧めします。たかが息切れと思うかもしれませんが、背後には様々な病気が潜んでいる可能性があり、そのうちには重篤なものもあり得るからです。

息切れが起きる原因は?

個別の病気を説明する前になぜ、息切れが起きるかについて簡単に説明しておきましょう。肺は息を吸うことで空気中の酸素を取り入れて、それを血液の中に取り込んで全身に送っています。しかし、病気その他なんらかの理由で身体に酸素がうまく届けられない事態が発生します。当然、身体はもっと酸素が欲しいと感じ、その情報が脳を経由して呼吸筋に伝え、もっと息をするように指令します。つまり、体内の酸素不足が息切れの大きな要因というわけです。

心不全の最初の症状は息切れです

治療は酸素不足を引き起こしている要因が何かを探ることから始めます。非常に多いケースでかつ重篤になる可能性が高い病気のひとつに心疾患があります。具体的には心不全が挙げられます。

2017年に日本循環器学会と日本心不全学会は分かりやすい心不全の定義を定めていますが、それによると心不全とは「心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気」だと言います。息切れが心不全のひとつのバロメータとなっているのです。

しかも、同年の人口動態調査によれば日本人の死亡原因の一位は癌ですが、二位は心臓病です。そのうちでももっとも多いのが心不全。心臓病で亡くなった20万4837人のうち、8万817人が心不全でした。

心臓はよくポンプに例えられます。左右にある心室が収縮・拡張を繰り返して体内に血液を循環させているのです。この働きが心筋梗塞、弁膜症、心筋症、不整脈や高血圧などによって低下するのが心不全です。ポンプがうまく働かなくなるのです。

その結果、心室からは十分に血液を送り出せなくなり、肺や全身から戻って来る血液も停滞することになり、肺や全身に血液が溜まり始めます。これがうっ血という状態です。

体内に必要な血液=酸素がちゃんと循環していないのですから、酸素不足になり、息が切れるのも当然でしょう。さらにむくみが生じ、体重が増加、食欲も落ちますし、疲れやすくもなります。その他、手足が冷たくなる、冷や汗が出る、尿が減るその他、さまざまな症状が出てくるようになり、日常生活にも支障をきたすように。そこまで行かないうちに治療を始めていただきたいものです。

肺の病気が酸素不足に繋がっていることも

空気を取り込む臓器である肺そのものが悪くなっているという可能性もあります。想定される病気としては肺炎、胸膜炎、肺がん、気管支喘息、過換気症候群、慢性閉塞性肺疾患などがありますが、ここではあまり知られていないものの、日本人の死因としては10位に入っている慢性閉塞性肺疾患を取り上げておきましょう。というのはこの病気は肺炎や肺がんなど重篤な肺疾患に発展する危険もあり、早期発見・早期治療が大事だと言われているからです。

慢性閉塞性肺疾患(COPD=chronic obstructive pulmonary disease)は、肺気腫や慢性気管支炎といった肺疾患の総称。一言で説明すると肺がたばこの煙などに含まれる有毒物質に長時間さらされることで炎症を起こし、息を吐き出しにくくなるなど呼吸機能が低下する病気です。

発症原因の9割以上は喫煙といわれており、日本では女性よりも約2.5倍ほど男性の患者が多いとも。注意したいのはこの病気は長い時間をかけてゆっくり進行するため、なかなか病気に気づきにくいという点です。若いうちに発症する例は少なく、年齢が高くなるほどに発症者も増えていくのですが、60代を超えての発症となると年のせいと思って放置されるケースが少なくありません。

しかし、放置すると前述のように重篤な肺疾患に発展することもありますし、感染症に対しても弱くなったり、日常生活に支障がでるようにもなりかねません。長年の喫煙者で息切れを感じるようになったという人は禁煙を考えると同時にこの病気かもしれないと疑ってみる必要があるかもしれません。

貧血も息切れの要因のひとつです

貧血も息切れの要因のひとつに挙げられます。貧血とは血液中の血球成分のひとつである赤血球数が減少する、あるいは赤血球に含まれているヘモグロビンが低下するというもの。ヘモグロビンは全身の細胞に酸素を送る働きをしていますから、赤血球あるいはヘモグロビンが減れば身体は酸素不足に陥り、息切れを起こすというわけです。貧血では息切れのほか、だるく、疲れやすくなることが多く、それ以外の症状としては顔色が悪くなる、動悸がする、めまいがするなどが挙げられます。

貧血は日常的によく聞く病気ですが、難しいのは貧血の原因もまた、心疾患、肺疾患同様に様々な原因が想定されるという点です。

たとえば女性に多い貧血のひとつに鉄欠乏性貧血があります。女性は月経や妊娠、婦人科疾患などで出血することが多く、それによって鉄分=血液が減少してしまうのです。加えて最近ではダイエットなどで栄養分が足りていない人が少なからずおり、一説には日本女性の10人に1人はこのタイプの貧血に悩まされているとも聞きます。
ところが、そうした出血をしそうにない高齢の男性に鉄欠乏性貧血が出ることがあります。その場合、疑われるのは体内のどこか気づかない場所で慢性的な出血が起こっている可能性もあります。これもいろいろ考えられますが、危険なものとして胃がんや大腸がんなど消化器系のがんがありえます。それ以外にも出血を伴う消化器系の疾患としては胃潰瘍や十二指腸潰瘍その他良性のものもありますが、用心するに越したことはありません。

体重を減らすことは心臓を大事にすること

息切れの要因として心臓、肺、血液の病気のうちの一部を見てきましたが、それ以外にも血管の病気として肺血栓塞栓症、肺梗塞などがありますし、甲状腺機能亢進症、ギランバレー症候群や過換気症候群など精神の病気からでも息切れは起こります。初期のうちには気づきにくいこともありますが、自分の身体の調子に関心を持ち、おかしいなと思ったら、そのままにしないようにしておきたいものです。

併せて体重の調節も意識しておきたいところ。人間の血液の量は体重の十三分の一。体重が増えると当然ですが、血液の量も増えます。しかし、だからと言って心臓が大きくなるわけではありません。つまり、体重が増えれば増えるほど心臓には負担がかかることになるのです。

肥満度を表す指標としては世界中で共通して使われているボディマス指数と呼ばれるものがあり、計算は[体重(kg)]÷[身長(m)の2乗]とそれほど難しくありません。インターネット上には身長、体重を入れると自動的に計算してくれるサイトもありますので、一度試してみて自分の身体の状態を把握してみても良いのではないのでしょうか。

ちなみにBMIが22になる体重が標準体重とされ、もっとも病気になりにくい状態と言われます。これが25以上になると肥満。脂質異常症、糖尿病や高血圧などの生活習慣病のリスクが2倍以上になるのだとか。そんな状況にならないよう、体重のコントロールを心がけましょう。