人生100年時代ブログ

2020.07.01

症状から病気を考える⑤~むくみ~

●むくみがある

心不全など重篤な病気が原因のことも

人間の身体のおよそ6割は水分です。そのうちの3分の2は細胞の内部(細胞内液)、残りの3分の1は細胞外(細胞外液)にあるのですが、時としてそのバランスが崩れることがあります。すると、細胞の間隙に水分が溜まってしまう現象が起きます。これがむくみ、医学用語では「浮腫(ふしゅ)」といわれるものです。

むくみは日常生活の中ではよく起こる症状のひとつ。長時間に渡る立ち仕事や窮屈な靴・服、寝る前の飲酒や飲み過ぎ、過度なダイエット、塩分・水分の摂りすぎなど、むくみはさまざまな要因で起こります。塩分の摂りすぎだけでも一晩で2キロ、3キロと増えることすらあるのです。特に筋肉量の少ない女性、太っている人はむくみやすのですが、それでも一晩寝て治ってしまうようであれば問題はありません。何が問題かを考え、塩分を制限する、飲み過ぎないようにする、歩いたり、ストレッチをしたりするなど、生活習慣を改めれば予防することは可能です。

その一方で重篤な疾患のひとつの症状であることもあります。たとえば、心不全がそのひとつ。日本循環器学会と日本心不全学会は2017年に心不全を「心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気」と定義していますが、脚の膝から下部分の前面や足首、足の甲などにむくみがあり、坂道や階段などで息切れを感じるようになったら要注意です。

同時に1週間に2キロ以上の体重増加、横になると咳が出たり、息苦しさを感じたりすることも。食欲不振、腹部膨満感、疲れやすい、手足が冷たい、尿量が減るなどといった症状もよく聞きます。症状の出方は人それぞれですが、同じ症状が出ていても病状が異なることもありますから、不調を感じたらまずは医者に見てもらいましょう。

腎臓病の初期症状のひとつがむくみ

腎臓病もむくみの原因としてしばしば疑われます。特に可能性が高いのは尿から多量の蛋白が漏れ、血中のアルブミンが低下するネフローゼ症候群や、腎臓の働きが全般的に低下する慢性腎不全です。

腎臓が原因となる場合には左右対称にむくみが出現します。最初は朝方にまぶたが腫れるようになったり、足首のくるぶし付近がむくんだりするのが一般的です。むくみから体重が増加、それにつれてむくみも全身に広がり、次第に手や顔がぱんぱんになっていきます。放置しておくと肺の中に水が溜まり、危険な状態に陥りますから、むくみが続く場合には早めに医師にみてもらいましょう。

また、尿に変化が出ることもあります。注意したいのは蛋白尿、血尿です。蛋白尿は尿中に蛋白がもれ出ている状態で、これが起きている場合には腎臓の中にある糸球体と呼ばれるフィルター部分に障害が起きている可能性があります。排尿後、尿が泡立っていたら疑ってみてください。

もうひとつの血尿は血液中の成分(赤血球)が尿の中にもれ出ている状態ですが、尿の色が赤くなくても血尿という場合があり、検尿以外ではなかなか分かりにくいものです。ただ、いずれも検尿さえすればすぐに分かります。

また、これ以外でも尿の量が増えたり、トイレに行く回数が増えたり、夜間にもトイレに行くようになったりする場合には腎臓の機能に問題がある可能性があります。尿の量は健康な大人の場合は1日1.0~1.5リットルですが、これが2.5リットルと2倍以上に増えた場合には危険です。同様に1日10回以上、夜間2回以上トイレに起きる状態を頻尿といい、こちらも検査をしてもらったほうが良いでしょう。

突発的に起こるむくみにもご用心

むくみは続く場合も危険ですが、突発的に起こるものにも注意が必要です。たとえば、1週間から10日ほど前に熱が出て、その後にむくんできた場合には溶連菌感染後糸球体腎炎が疑われます。むくみ発生の前の感染がきっかけとなって発症する一過性の急性腎炎症候群で、むくみに加え、蛋白尿・血尿、尿量の減少、高血圧などが起こります。主に子どもから若年層に多い疾患ではあるものの、成人にも見られることがありますので知っておきましょう。

同様に薬の飲み始めや、薬を変えたタイミングでむくみが出るようになったら、薬剤性の腎障害が疑われます。薬剤による臓器障害としてはそれ以外にも骨髄、肝臓、皮膚の障害が知られていますが、薬剤性腎障害は腎不全への進行を早める可能性もあり、意識しておきたいものです。

服薬の直後に急に瞼や唇、頬などの皮膚、喉、舌などに腫れが出現した場合には血管運動性浮腫が疑われます。これは遺伝あるいは薬の副作用として引き起こされるもので、原因になりやすい医薬品としては解熱消炎鎮痛薬、ペニシリン、高血圧薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬など)、線溶系酵素、経口避妊薬などが挙げられます。腫れるのみならず、息苦しい、喉が詰まる、話しづらいなどの症状もあり、特に息苦しい場合には呼吸困難に陥る可能性があり、一刻一秒を争います。服薬した薬を持参のうえ、すぐに行動してください。

膠原病、下肢病脈瘤、肝臓病などの危険も

一刻一秒とまでは言わないものの、他にも早めの診察が必要な病気があります。たとえば、関節の痛みを伴う場合には膠原病が疑われます。関節リウマチに代表される膠原病は真皮、靱帯、腱、骨、軟骨などを構成する蛋白質=コラーゲンに障害・炎症が生じる多くの疾患の総称です。原因不明で治療法のない難病としてイメージされる膠原病ですが、近年の医学の進歩で予後は大きく改善しています。

むくみに加え、脚の膝から下の表面に静脈が拡張し、浮き出てきたという場合には下肢静脈瘤である可能性があります。最近よく聞くようになった下肢静脈瘤は命に関わるような病気ではありませんが、痛みやかゆみがあり、外見上もよろしくないことから治療を行うのが大半。最近では負担の少ない治療法も出ています。

元々肝臓に疾患を抱えていた場合でむくみが出始めた場合には肝臓の症状が進行している危険があります。肝硬変になると脚だけではなく全身にむくみが生じますから、分かりやすいはずです。早めにかかっている医師に相談しましょう。

それ以外では甲状腺ホルモンの異常からきている場合、癌の治療後であればリンパ浮腫の疑いがあります。甲状腺ホルモンの異常が原因の場合には足がむくむほか、だるい、疲れやすいなどの症状もありますが、ホルモンが過剰なのか、不足なのかで症状はまったく異なるものになります。また、同じ症状が他の病気で出ることもあり、正しい診断のためには専門医を訪れることが大事です。