人生100年時代ブログ

2020.08.23

症状から病気を考える⑦~腹痛~

●お腹が痛い

消化器系を中心に。癌という危険も

頭痛と並び、ごくポピュラーな症状のひとつが腹痛。生まれつき消化器の弱い人の中には痛いのが日常という人もいらっしゃるかもしれません。幸い、腹痛の99%は自然に収まる、あまり気にする必要がないものです。しかしながら、残りの1%の中には怖い病気も含まれています。お腹が痛いだけではなく、それに伴う随伴症状に注目、危険な病気を見ていきましょう。

腹痛で危険な病気と聞いてまず、想起されるのは消化器系を中心とする癌でしょう。実際、厚生労働省の死亡統計でみると胃がん、大腸がんが、癌死亡原因の2位と3位を占めています。

ただ、消化器系に限らず、癌は初期には自覚症状がないことがほとんどです。かなり進行しても症状がない場合もあり、症状だけで発見できると思うのは危険。定期的な健診も受けた上で、身体の変化にも注意することを前提に、以下、それぞれの癌の症状を見ていきましょう。

胃、大腸、食道、膵臓で異なる症状

まず、胃癌では胃のあるみぞおち部分に痛みを感じる、不快感や違和感がある、胸やけ、吐き気、食欲不振があるなど。胃がんからの出血によっておこる貧血や黒い便も特徴的ですが、これらは胃癌だけではなく、胃炎や胃潰瘍でも起こります。胃炎や胃潰瘍の治療での内視鏡検査で胃癌が見つかるのもよくある話です。

大腸癌の場合は便に血が付着する血便、腸からの出血による赤または赤黒い便が出るなどの下血、下痢と便秘の繰り返し、便が細くなる、お腹がはる、貧血、体重減少などが主な症状。代表的な症状である血便や下血は痔などの病気でも見られるため、肛門科での治療時に大腸検査を行い、そこで発見されることもあります。

食道癌の場合には飲食物を飲み込んだ時に胸の奥が痛む、熱いものを飲み込む時に沁みる気がするなどといった場合には肺、喉などの検査に加えて食道の検査も行うようにしたいところ。それ以外には飲食物がつかえる感じ、体重減少、胸や背中の痛み、咳、声のかすれなどの症状が出ると言われます。

膵臓癌の場合には腹痛に加え、腰や背中の痛みなどが起き、食欲不振、すぐにお腹がいっぱいになる感じがするようになる(腹部膨満感)、黄疸が起きるなど。糖尿病を発症することもあります。

上腹部の激しい痛みには膵炎の可能性が

腹痛でも上腹部に痛みがある場合には膵炎を疑ってみましょう。痛みの程度、痛む場所には個人差はありますが、上腹部が痛み、吐き気、嘔吐があり、かつ嘔吐しても痛みが続く場合には可能性があります。それ以外では背中にも痛みがあったり、発熱を伴ったりすることもあります。

膵炎は男性、特に中高年に多い病気で、近年増えているのが急性膵炎です。原因としてもっとも多く挙げられるのは過度な飲酒。つまり酒の飲み過ぎです。次に挙げられるのは胆石で、それ以外には突発性と呼ばれる原因不明の膵炎もあります。

急性膵炎の大半は軽症で絶食、絶飲、輸液等で回復しますが、慢性膵炎の場合には症状が進むと膵性糖尿病を発症、膵臓癌になる可能性も高くなり、生活に多大な障害を及ぼします。ただ、同じように飲酒していても発症しない人もおり、その辺りのメカニズムはまだ解明されていません。

下痢、下血を伴うようなら潰瘍性大腸炎を疑いましょう

腹痛に加え、下痢、下血がある場合には潰瘍性大腸炎を疑いましょう。名称通り、大腸に炎症が起きる病気で、原因は不明ですが若い人の発症が多いとされます。近年は中高年の発症も見られるようになっています。腹痛、下痢、下血以外では発熱、動悸、倦怠感などもよくある症状で、口内炎、関節痛、皮膚の炎症が起きることもあります。

原因が解明されていない病気のひとつで、遺伝的になりやすい人がいること、そこに過労や寝不足、感染症など免疫機能に負担がかかる状態が起きると発症しやすいことまでが分かっています。

若い男性がかかりやすいクローン病

潰瘍性大腸炎同様、代表的な炎症性腸疾患のひとつとして知られているのがクローン病です。潰瘍性大腸炎は大腸の炎症によって起きる病気でしたが、クローン病の場合には口腔内、小腸、大腸など消化管のいたるところに炎症が起きます。

症状は炎症を起こした部位によって異なるものの、繰り返される腹痛、下痢は多くの場合に共通。体重減少や全身の倦怠感、食欲不振、発熱など全身に渡る症状もよく見られます。また、肛門周辺に症状が出ることも一般的で、痔瘻、肛門痛が起きます。男女比では男性がかかりやすい病気で、年代としては10代後半から20歳代によく起こります。

胆石症は右上腹部の強い痛み

同じ上腹部でも右側に中心にみぞおちあたり、背中や腰、へその上などの周期的に反復する激痛が起きる場合には胆石症の可能性があります。この痛みは痛みの横綱とも呼ばれ、心筋梗塞、尿管結石などと並ぶほどのものとされますが、胆石の場合には発作が収まると嘘のように痛みがなくなるのが特徴です。

一方で胆石ができていても全く症状が出ない人もおり、特に1センチ以上と大きくなると動かなくなるため、逆にサイレントストーンと呼ばれる無症状になるのだとか。痛むのは石が胆管内を移動しうる、その前の段階だそうです。

虫垂炎、十二指腸から心筋梗塞まで疑いは多数

ここまで様々な腹痛の要因を見てきましたが、もちろん、これ以外にも多数の病気が想定されます。たとえば多年代で起こる、病気としては非常にありふれたものと認識されている虫垂炎では、微熱に加えて右下腹痛や吐き気、食欲不振などの症状が現れます。十二指腸潰瘍でも胆石症同様に右上腹部に痛みが出ることが多いと言われますが、胆石症の疝痛とは異なり、鈍く、うずくような痛みとされます。

また、腹部にある臓器が原因でないこともあります。たとえば心筋梗塞でもみぞおちが痛むことがあり、胃の疾患を疑って胃カメラを撮ったものの原因が分からなかったということも。様々な病気が隠れている可能性があるわけで、腹痛でもいつもと違うと思った時には腹痛には躊躇せずに検査、診断を受けるようにしていただきたいものです。