人生100年時代ブログ

2020.11.11

非結核性抗酸菌症(NTM症)について~症状・診断・治療~

非結核性抗酸菌症とは?

非結核性抗酸菌症とは、結核菌、らい菌以外の抗酸菌によって感染する病気で、NTM症とも呼ばれます。NTM(non-tuberculosis mycobacteria)とは、結核を引き起こす結核菌、ハンセン病を引き起こすらい菌以外の抗酸菌の総称です。
NTMは湖沼や土壌などに普通に存在する環境常在菌で、これらを含むエアロゾルを吸入すると呼吸器症状を引き起こします。ただし、結核菌とは違いヒトーヒト感染は起こしません。また、多くの場合、数年~10年以上と長い年月をかけてゆっくりと進行します。
日本では、特に東日本についてはMAC(Mycobacterium avium complex)と呼ばれる抗酸菌による感染例が多く、中でもM.aviumという菌種の頻度が最も高い傾向にあります。日本呼吸器学会によれば非結核性抗酸菌症のうち、8割はMAC、1割はM.kansasii、残りの1割がその他の抗酸菌による感染であったそうです。
MACは水道水、ふろ水、家庭内の鉢などにもおり、ごくありふれた存在です。肺結核の患者数は年々減少している一方で、非結核性抗酸菌症の患者数は増加の一途をたどっています。特に、庭の手入れや水回りの家事をする事が多い中高年女性を中心に感染者が急増しており、家事や庭作業の際には注意したい病気です。

非結核性抗酸菌症の診断について

肺非結核性抗酸菌症は、健診で発見されるケースも少なくありません。例えば、胸部X線写真で中下肺野の陰影を指摘されたり、胸部CT検査で中葉や舌区の気管支拡張像や粒状影を指摘されたりして呼吸器内科を受診した結果、肺非結核性抗酸菌症であったという事もあります。感染していても自覚症状がないケースもあり、早期発見のために定期的な健診は欠かせません。一方、長引く咳や血痰などの自覚症状があり、来院される方もいらっしゃいます。
診断は、非結核性抗酸菌症に特徴的な胸部画像所見と、2回以上の異なった喀痰検体から菌培養陽性を認める事や、気管支鏡検査で得た気管支洗浄液を用いた結果1回以上で菌培養陽性を認める事などが必要条件です。

治療とその後の経過観察について

非結核性抗酸菌症の治療では、複数の治療薬を組み合わせる多剤併用療法がとられます。標準治療は、肺結核症に用いる抗結核剤にクラリスロマイシンという抗生剤を併用する方法です。内服治療以外では、適応があれば外科治療を受ける方もいらっしゃいます。外科治療により完全に治癒するわけではないものの、病状のコントロールに有効とされており、肺葉切除や肺区域切除などの手術が一般的です。なお、術後も内服治療は必要となり、いずれも専門科の管理下で治療を進める必要があります。
内科治療の場合は副作用対策が要となり、内服開始後2か月間は2週に一度の血液検査は必須で、視神経障害の早期発見のためには眼科との併診をしなければなりません。また、肺非結核性抗酸菌症の治療に関しては、内科治療での根治は難しく、治療薬を止められない場合もあります。残念ながら自覚症状改善や病状進行を遅らせられれば、生命予後を改善できるだろうという期待から治療を開始する場合もあります。
治療効果があがった場合の内服治療期間は2年間とし、その後も3か月に一度は画像検査による経過観察が必要です。服薬が長期にわたることに加えて、検査で増悪が認められれば治療を再開しなければならず、患者さんにとってはなかなか大変な呼吸器感染症です。風呂掃除や園芸の際のマスク着用、シャワーヘッドや浴槽の定期的な清掃、浴室利用後の乾燥など、日常的に予防していく意識が大切です。