人生100年時代ブログ

2020.12.08

症状から病気を考える⑩~嘔吐・吐き気~

嘔吐する、吐き気がする

脳が原因の嘔吐・吐き気には生命の危険も

嘔吐、吐き気と聞くと最初に想像するのは胃腸の病気です。腹痛、下痢を伴うとなればますます胃腸系の疾患が疑われます。ただ、注意したいのは嘔吐のうちには胃腸系ではなく、生死に関わる疾患に関わるものがあるという点です。
典型的なものとして脳に関する疾患があります。代表的な例が小脳梗塞です。激しい吐き気、嘔吐がしつこく続き、さらにめまいがする、頭痛がするとなったら疑ってみてください。身体がふらつく、ろれつが回らなくなるなど、身体のバランスが保ちにくく感じることも同時に起こっているはずです。
同様に脳腫瘍、脳出血・梗塞、クモ膜下出血、髄膜炎など脳圧亢進(脳の疾患、血腫、腫瘍などで脳の容積が増大、頭蓋骨内の圧力が高まった状態のこと。頭蓋内圧亢進とも)を伴う疾患では頭痛、吐き気や嘔吐を伴います。脳梗塞・脳出血の場合は加えてしびれや麻痺、ろれつが回らないなどの症状を伴うこともあり、脳炎・髄膜炎などの場合には高熱を発する場合があります。

胸痛を伴う嘔吐には心筋梗塞、心筋炎の疑いも

もうひとつ、危険が高いのは胸痛を伴う嘔吐です。吐き気を伴う胸痛の場合には心筋梗塞ではないケースもありますが、そこで嘔吐に加わると9割以上の確率で心筋梗塞が疑われます。心臓の筋肉に炎症が発生し、心不全 や致死的不整脈の原因となることがある心筋炎の症状としても吐き気、嘔吐があります。
心筋梗塞はかつて患者の3割が死亡、2カ月以上の入院が必要な病気でしたが、昭和50年以降、心臓カテーテル治療、ステント治療が普及、現在では1週間以内の入院で済み、死亡率も往時の3分の1以下になっています。ただし、大事なことは早期の発見、治療。嘔吐という一般的な症状にも注意を払う必要があるのです。

消化器系疾患では腹部の他の症状に注意

嘔吐、吐き気の原因として最も頻度が高いのは、やはり消化器疾患です。腹痛や下痢、腹部膨満などといった他の腹部症状を伴うことが多いのが特徴で、起こり方の順番や食事内容、周囲に同じような症状の人がいないかなどから判断をしていきます。
消化器疾患のうちもっとも多いのは急性胃腸炎です。これは胃腸の粘膜がなにかしらの原因によって炎症を起こしている状態を指し、粘膜が腫れ、急性発症の下痢や吐き気、嘔吐、腹痛を伴うようになるもの。様々な原因がありますが、ウイルス性をはじめとした感染症が多いため、急性胃腸炎というと一般的には感染性胃腸炎を指します。原因となるウイルス、細菌としてはロタウイルス、ノロウイルス、アデノウイルス、黄色ブドウ球菌、セレウス菌、サルモネラ菌、カンピロバクターなどがあります。
たいていの場合、適切な抗菌薬治療が受けられればそれほど深刻な事態に陥ることはありませんが、細菌性胃腸炎では原因となる細菌に応じて特徴的な合併症が生じることがあり、注意が必要です。たとえば、カンピロバクターではギラン・バレー症候群、O157に代表される腸管出血性大腸菌では溶血性尿毒症症候群などがあります。
 腹痛を伴う場合には腸閉塞、虚血性腸炎、胆嚢炎・胆管炎、急性膵炎 、虫垂炎なども疑われます。急性胃腸炎の場合には吐き気、嘔吐が先にあり、次いで腹痛が出ますが、虫垂炎の場合には上腹部やへその回りの腹痛の後に吐き気、嘔吐、そして右下の腹部に痛みを感じることが多く、症状の経過によって原因となる病気には違いがあるわけです。

すぐに収まるからと我慢しない

どのような症状の場合にもすぐに収まるなら病院に行くまでもないと考えがちですが、それが繰り返し起こるようであればきちんと医師に見てもらう必要があります。たとえば急性胆嚢炎や胆石症 の発作などでも急な吐き気、嘔吐が起きることがありますが、食後1~2時間ほどで現れ、その後、収まってしまうことが多いため、一時的に食べ過ぎた、あるいは何か、食べたものにあたったかだろうと考え、我慢してしまう人が少なくありません。右脇腹やみぞおちに鈍痛がある、発熱するなどの随伴症状がある場合には我慢せず、病院に相談したいところです。
それ以外で吐き気、嘔吐を生じる疾患としては腸閉塞、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、胃がん、メニエール病や良性発作性頭位めまい症などもあります。また、身体ではなく、精神の不調からくる吐き気、嘔吐もあり、代表的なものとしてはうつ病が挙げられます。薬の副作用で吐き気、嘔吐が起こる場合もあり、要因は実にさまざま。飲み過ぎ、食べ過ぎや乗り物酔いなど自分で原因が分かっている場合以外は体調の変化に注意、経過を見ながら早めに医師に相談してください。