人生100年時代ブログ

2020.05.26

症状から病気を考える②~胸の痛み~

●胸が痛い

病気特定のためには問診が重要です

胸部には心臓、肺、胸膜、一部の消化器臓器に骨や神経、筋肉などがあるため、胸が痛いと聞いただけですぐに病気が特定できるわけではありません。そこで、まず、病気を特定するために必要なことは問診です。特に狭心症は発作時の心電図を見なければ判断がつきにくいため、何よりも問診が大事とされます。

具体的には以下のような点を聞くことになります。過去にも痛みを感じたことがあったのであれば、記憶を辿り、正確に医師に伝えられるようにしておくと良いでしょう。

・どのように痛むのか
刺すように痛い、鈍い痛みがある、動くと痛い、圧迫されるように痛い、締め付けられるように痛いなど
・どこが痛いのか
胸の一部が痛い、前胸部が痛い、背部が痛い、胸だけでなく他の部位に痛みがあるなど
・どのくらいの時間、痛みが持続するのか
瞬間的に痛い、数分ほど痛みが続く、一時間以上痛むことがあるなど
・どのような時に痛むのか
運動をしている時に痛む、安静にしている時に痛む、姿勢を変えた時に痛む、食事をした時に痛む、深く息を吸うと痛むなど
・他に症状がないか
喉が詰まるように感じる、発熱がある、吐き気がする、嘔吐を伴うなど
・過去に同じような痛みを感じたことがあるか
あるとしたら痛む頻度、持続時間などに変化はあるかなど

狭心症にはいくつかのタイプがあります

いくつもある胸痛の要因のうち、生死に関わることが多い代表的な病気が狭心症心筋梗塞といった虚血性心疾患です。虚血性心疾患とは心臓に血液を供給するための血管である冠動脈が動脈硬化によって狭くなったり、閉塞することによって血流に障害が起きる病気のことです。そのうち、狭心症にはどんな時に痛みが生じるのかによっていくつかの種類があります。

ひとつは身体を動かしている時に痛み、静かにしていると楽になるというもので、これを労作性狭心症といいます。運動をしている時や階段、坂道などを上がっている時、重いモノを持ち上げた時など身体を使った時に起きるものです。

身体を動かしている時には心臓からたくさんの血液を送り出す必要がありますが、冠動脈が狭くなっていると心筋には十分な血液が供給できません。そこで痛みを感じることになるわけですが、痛みの続く時間は2~3分から10~15分ほど。前胸がぐうっと締められるように痛み、同時に喉が詰まったりもします。

他にも左の肩、左の歯、左上腕の内側など身体の左側に放散痛と呼ばれる痛みが出ることがあります。胸痛はないのに、喉が詰まる感じ、身体の左側に痛みを感じることもあります。心臓は人体の中心から少しだけ左寄りにあるため、痛みも左側に出るもので、右に痛みが出ることは極めてまれです。

一方、寝ている時やのんびり寛いでいる時など安静にしている時に胸痛が起きるタイプもあります。これを安静時狭心症といいます。冠動脈が一時的に痙攣したり、血の塊ができて心臓に送られる血の量が減ったりしたときに起こるもので、冠攣縮性(かんれんしゅくせい)狭心症とも呼ばれます。痛みについては労作性狭心症と同じで、世界的に見ると理由はまだ明らかになっていませんが、日本人に多い病気です。

ひとつ、注意したいのは通常の発作の場合にはそれほど長くは続かないものの、時として10分、20分と続くことがあり、痙攣が収まった後で一気に血が流れるようになるとそれが原因で再灌流不整脈(灌流とは臓器などに血液などの液体を流すこと)が起き、死に至ることがあるという点です。

いずれの発作も一度起きるとしばらくは起きないことが多いのですが、それが数日、数時間といったように短期で繰り返すようになったり、労作時だけでなく安静にしている時にも起きるようになることを不安定性狭心症と呼びます。急性冠症候群とも呼ばれ、心筋梗塞に移行する可能性が高く、非常に危険です。

心筋梗塞は狭心症よりも痛みが長時間続きます

狭心症は動脈硬化によって冠動脈が狭くなることで起こりますが、それがさらに進行して冠動脈が完全に閉塞してしまった状態が心筋梗塞です。心筋に血液が行かなくなり、心筋が壊死してしまっており、狭心症よりも長く痛みが続きます。同時に冷や汗が出たり、吐き気がするなどの症状も出ます。ここまでの状態になった場合には自然に痛みが収まることはありませんし、命が危険です。救急車を呼んで一刻も早く病院に行かなくてはいけません。
このように狭心症心筋梗塞は生命に関わる病気ですが、最初の痛みを感じてすぐに病院に行く人は意外に少ないのだとか。すぐに収まるならそれで良しと考えるのでしょう。実際、冒頭にも書きましたが、心臓の異常は発作時に心電図を撮らなければ分かりません。

ですが、医者に行けばニトログリセリンを処方してもらえます。これは血管を広げる薬で、発作が起きた時に口を濡らして舐めて使います。舐めた時に霧が晴れるように痛みが引くのであれば、狭心症ということが分かります。
もし、狭心症であることが分かったら、少しでも発作を起こさないようにするために、生活を見直す必要があります。動脈硬化の原因となるものとしては糖尿病や高血圧、高脂血症、肥満、喫煙などがあると言われます。煙草は止めない限り、治癒しないそうですし、深酒後に明け方発作を起こして亡くなる例が多いと聞くと気をつけたくなるのではないでしょうか。

喫煙、飲酒以外では悪玉コレステロールを下げる努力も必要です。食べるものに気を付ける、適度な運動をするなど生活を改善し、必要があればコレステロールを下げる、スタチンなどの薬を服用するのも手です。症状がなくても飲める薬ですが、薬である以上、非常に頻度は低いものの副作用はありますから、まずは医師に相談してみてください。

また、過度の緊張、集中もリスクを高めます。アメリカの34代大統領だったアイゼンハワー氏はゴルフ好きだったことで知られていますが、グリーン上では2回までしかパットを打たなかったとか。というのはグリーン上での突然死の原因の8割以上は心筋梗塞などの心疾患。アイゼンハワー大統領は緊張を強いることになるパットを医者に止められていたのです。

血管、肺や消化器の病気の場合もあります

心臓の病気から起きる胸痛について説明してきましたが、それ以外の病気で起こることもあります。たとえば、大動脈解離という血管が割ける病気があります。これは突然死の原因にもなる病気で、非常に激しい引き裂かれるような痛みを伴います。これも動脈硬化により引き起こされることが大半です。

肺の病気という可能性もあります。肺には痛みを感じる神経がなく、両肺の表面を覆う薄い膜・胸膜にあるため、胸膜に関係する病気が痛みを感じる原因になります。たとえば胸膜が炎症を起こし、肺と胸膜との間に胸水という液体が溜まる胸膜炎の場合には鈍い痛みを感じます。大きく呼吸すると悪化することが多いのも特徴です。肺が胸水で圧迫されるため、呼吸困難に陥ることもあります。

あるいはやせ形の若い男性に多い気胸も突然の胸痛に息苦しさを伴います。深呼吸で痛みが増すのは胸膜炎同様です。

消化器の病気としては胃食道逆流症も胸痛の原因になります。飲みこむのが難しくなる嚥下困難、胸やけなどの症状を伴うことが一般的です。消化器系の病気では急性膵炎、胆のう疾患などでも胸痛を感じることがあります。
それ以外では肋骨の骨折、肋間神経痛、悪性腫瘍などでも胸に痛みを感じますし、心因性の心臓神経症や過換気症候群などでも同様。実にさまざまな要因があるわけです。

そのうちでも心臓、肺、血管に関する病気の場合には命に関わる可能性があるため、痛みが激しく、持続する場合には救急車を要請する必要があるかもしれません。そうでない場合にも早めの受診をお勧めします。