人生100年時代ブログ

2021.06.24

狭心症

 狭心症のイメージ

①狭心症とは?

狭心症とは心臓の筋肉に供給される酸素が不足した際に胸部に一時的な痛みや圧迫感、絞扼感が生じる病気のことを指します。

②狭心症の原因は?

心臓の周りには冠動脈という血管がはり巡らされており、酸素を心臓の筋肉(心筋)に供給しています。心臓は絶えず動いているポンプとしての役割を担っているので、その役割を支える心筋は酸素を多く含む血液を必要とします。通常、運動などの労作やストレス状態などで心臓への負荷が増大すると、心筋が必要とする酸素量も増大します。血液の通り道である冠動脈が狭窄すると、冠動脈内の血流が制限され、供給できる酸素量も減少してしまいます。この状態で心臓への負荷が増大すると、心臓が必要とする十分な酸素が供給できなくなり、胸部の痛みや絞扼感などの狭心症の症状を起こします。
冠動脈の狭窄が70%以上になると、安静時にも狭心症の症状が起きることもあります。

また、冠動脈の狭窄がない、あるいは軽度であっても、冠動脈自体が痙攣することで冠動脈の血流が制限され、狭心症の症状が起きることもあります。

ご相談のある方、まずはご予約下さい。 03-3572-100

③狭心症の症状

多くの場合には胸部の一時的な痛みや絞扼感、不快感を自覚します。程度が軽い場合に不快感として自覚しますが、この不快感が肩、腕の内側、背中、のど、あご、歯などに広がることもあります。また、胃のあたりの不快感、膨満という症状として現れることもあります。肩の痛みやみぞおちの痛み、不快感といった症状の場合、整形外科疾患や消化器疾患として当初は診断されてしまうケースもあります。

狭心症は以上で挙げたような症状をきたす疾患を指しますが、別の概念として症状を伴わない無症候性心筋虚血と言われる疾患もあります。狭心症と同様に冠動脈の狭窄によって供給できる酸素量は減少するのですが、狭心症と異なり症状は現れません。糖尿病を罹患している方で現れることも多いです。

④狭心症の分類

  • ・安定狭心症
    運動などの労作やストレスによりおこる狭心症です。普段は特に症状がないタイプの狭心症です。
  • ・不安定狭心症
    少しの運動や労作で胸の痛みがある、発作の頻度が多くなったり、痛みの程度が悪化しているなどの狭心症を指します。適切な加療をなされない場合、心筋梗塞や致死性不整脈の発症に発展することもあり、すぐに治療が必要な狭心症になります。
  • ・異型狭心症(冠攣縮性狭心症)
    冠動脈の狭窄ではなく、冠動脈自体のけいれん(攣縮と呼びます)によって、冠動脈内の血流が制限されて起こる狭心症を指します。安静時に出現することの多い狭心症です。

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⑤狭心症の診断・検査

  • ・問診・診察
    まずは症状を問診し、狭心症を疑う状態なのかを判断します。③の項目で挙げたような症状がある場合は、狭心症疑いと診断し、検査を行っていきます。身体診察も行い、心雑音や肺雑音がないか、足のむくみなどないかを確認します。

  • ・心電図検査
    まずは心電図検査を行います。心電図検査では心電図波形のST部分と呼ばれる部位の上下が認められることもありますが、発作中でも認められないこともあります。
    心電図変化がある場合は狭心症と診断します。心電図変化が無い場合でも痛みの性状や部位、発症のエピソードなどを参考に狭心症と診断します。

  • ・負荷心電図検査
    狭心症は冠動脈の狭窄が原因で、心臓に負担がかかった際に酸素供給量が十分でなくなり症状として現れる疾患です。運動(トレッドミルやエルゴメーター)や薬物投与により、心臓に一時的に負荷をかけて、虚血を示唆する心電図変化がないかをチェックします。心電図波形のST部分の変化を主に見ます。

  • ・心エコー検査
    超音波を使って心臓の状態を観察します。心臓の大きさや心臓の壁の運動、弁膜症(弁の狭窄や逆流がないか)を評価します。

  • ・冠動脈造影検査
    カテーテルを使って、心臓の周りを走っている冠動脈に造影剤を注入してX線で撮影する検査です。この検査をすることで冠動脈の狭窄を評価することができ、狭心症の確定診断を得られることが多いです。冠動脈の狭窄がなくとも、異型狭心症を疑う症例の場合にはアセチルコリンなどの薬物負荷をかけて冠動脈の痙攣(攣縮と呼びます)が起きるかを確認します。冠動脈造影検査の結果をもとに、侵襲的な治療が必要な状況であるかや侵襲的治療を行う場合に冠動脈バイパス術(CABG)と経皮的冠動脈インターベンション(PCI)のどちらが適切かを判断します。
    冠動脈造影検査は手首や肘、鼡径部の動脈のいずれかから行うことがほとんどです。喘息や造影剤アレルギーの既往のある方はステロイドや抗ヒスタミン薬の事前投与を行った上で検査を行います。

  • ・冠動脈CT
    CTにて冠動脈の狭窄がないかを観察する検査です。息止めが難しい方、造影剤に対するアレルギーのある方は実施することが難しいです。正確な診断という点では冠動脈造影検査のほうが優れていますが、侵襲性の点ではCTが優れています。

  • ・心臓核医学検査
    心筋シンチグラムとも呼ばれます。微量の放射性物質(トレーサーと呼ばれる)を静脈内注射し、トレーサーがガンマ線を放出し、そのガンマ線をとらえることで組織に取り込まれた放射性物質を評価します。心筋を通る血流を評価する際は、一般的にテクネチウム99m標識セスタミビやタリウム201などのトレーサーを使用し、運動負荷試験を行った後に撮影を行います。運動することができない人の場合、 ジピリダモール、 ドブタミン、 アデノシンなどの薬剤を静脈内に注射し撮影を行うこともあります。
    心臓の虚血がどの部位にあるかを調べる検査であり、治療方針に影響を与えます。

⑥治療

主に薬物治療と血行再建の2つに分かれます。

A)薬物治療

  • ・硝酸薬
    ニトログリセリンは、短時間で作用を発揮する硝酸薬で、血管を拡張させる作用があります。ニトログリセリンの服用により、狭心症発作は数分で軽減され、その効果は30分間続きます。ニトログリセリンには、舌下投与で使用する錠剤と、口から吸入するスプレー剤があります。
    長時間作用型の硝酸薬(イソソルビドなど)は、1日に1~4回服用します。硝酸薬の皮膚パッチ剤や外用剤も有効で、この場合は数時間以上にわたって薬が皮膚から吸収されます。

  • ・カルシウム拮抗薬
    カルシウム拮抗薬には、血管を拡張させ狭くなるのを予防する作用と、冠動脈のけいれんを止める作用があります。カルシウム拮抗薬は血圧を低下させる薬剤です。例えばベラパミルやジルチアゼムには、心拍数を低下させる作用もあります。血圧と心拍数を低下させることで、酸素需要量が減少し、狭心症のリスクが低下します。
    安定狭心症だけでなく、異型狭心症の治療にも有効です。

  • ・ベータ遮断薬
    ベータ遮断薬は、 アドレナリンや ノルアドレナリンなどのホルモンが心臓などの臓器に及ぼす影響を抑制します。ベータ遮断薬は安静時の心拍数と血圧を低下させます。心拍数と血圧の上昇を抑え、酸素需要量を減少させることで、狭心症のリスクを低下させます。またベータ遮断薬は、致死性不整脈の出現頻度を低下させる効果もあるため、冠動脈疾患を有する患者の長期的な経過を改善します。

  • ・抗血小板薬
    血流中を循環する血小板は、血管が損傷すると血栓の形成を促進します(血栓症)。しかし、血小板が動脈壁内のアテローム上に集まると、その結果として生じる血栓が動脈を狭くしたり詰まらせたりして、狭心症を引き起こす可能性があります。

アスピリンは血小板の性質を不可逆的に変化させ、冠動脈疾患による死亡のリスクを低下させます。冠動脈疾患がある人の大半には、心臓発作のリスクを低下させるために、アスピリンを毎日服用することが推奨されています。アスピリンの作用に加えて、プラスグレル、クロピドグレル、チカグレロルには血小板の性質をさらに変化させる効果があります。心臓発作の発生後または経皮的冠動脈インターベンションの実施後の一定期間は、心臓発作のリスクを低下させるため、アスピリンに加えてこれらの薬剤のいずれかが使用されることがあります。

  • ・アンジオテンシン変換酵素阻害薬とアンジオテンシンII受容体拮抗薬
    アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬とアンジオテンシンII受容体拮抗薬は、狭心症自体に対する治療効果はありませんが、血圧を低下させ、心臓発作のリスクと冠動脈疾患による死亡リスクを低下させる効果があります。

  • ・スタチン
    スタチン系薬剤は、LDLコレステロール(冠動脈疾患を引き起こすコレステロールの一種)の血中濃度を低下させる薬です。この種の薬は、狭心症心筋梗塞、脳卒中、突然死のリスクを低下させます。

B)血行再建

血行再建には経皮的冠動脈インターベンション(PCI)と冠動脈バイパス術(CABG)の2種類の治療があります。

経皮的冠動脈インターベンションは通常、1本または2本の動脈に狭窄がみられ、かつ狭窄した部分があまり長くない場合に選択されます。安定した狭心症である場合には、狭窄した動脈の本数や糖尿病の有無、左冠動脈の主幹部にかかる病変かなどを考慮してPCIかCABGかを選択します。
この選択に関わる指標としてSYNTAXスコアという指標があり、SYNTAXスコアが大きい場合にはCABGを選択します。
一般論として、糖尿病を有していたり、左冠動脈主幹部にかかる病変、3本の冠動脈に狭窄がある場合にはCABGを選択するケースが多いとされます。
しかし、新しい技術の開発や経験の蓄積により、より多くの人に経皮的冠動脈インターベンションを選択できるようになってきています。PCIの場合には局所麻酔で手首や肘、鼡径部の動脈からカテーテルを挿入して心臓の冠動脈をバルーンで拡張したり、ステントを留置したりします。
体への侵襲が少ないことがメリットではありますが、冠動脈内にステント留置することで再狭窄を繰り返す場合にはCABGを選択します。

CABGは侵襲が大きいことがデメリットですが、糖尿病を有する方や複雑病変の方の場合には再狭窄率が低いとされます。また、冠動脈狭窄のみならず、大動脈弁や僧帽弁の狭窄や閉鎖不全などがある場合には、PCIではなく、CABGを選択し、同時に外科的に弁置換術や弁形成術などの手術を施行します。